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「まあそれならすぐに帰ってくるだろ。 って言ってるうちに帰ってきたかな?」
康史が向いた方へと和輝と雪江の視線が動く。
ちょうど扉が開いて、黒い髪をなびかせながらひとりの女生徒が教室へ入ってくるところだった。
女生徒は三人を見つけると、小走りで駆けてきた。
「あれ? 坂下君に雪江ちゃん、どうしたの?」
「いや、カラオケ行かないかって誘ってたところさ」
「カラオケ……?」
きょとんとした様子の女生徒――秋山琴実が首をかしげる。
「あ、今日からだっけ?」
「そうそう、だからどうかなって!」
恐らく、琴実もカップル半額のことを思い出したのだろう。
雪江が期待の眼差しを向け、琴実の手を取って上下に振る。
そう言われた琴実は今度は黒髪を上下に揺らしながら、困った表情を見せる。
「うーん……私昨日買い物しちゃってお金が……」
あはは、と付け加えながら申し訳なさそうに呟く。
その途端に雪江の表情が暗くなり、膝をがっくり折る。
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