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その時、今時の音楽が鳴り響く。
「おっと……わりい」
その音楽の主である和輝が一言断りを入れてから席を立つ。
部屋の外へ移動して、改めてスマホを取り出し着信ボタンを押す。
「もしもし」
『よっ、今大丈夫か?』
「大丈夫だけど、どうかしたか政宏?」
『いや特に用事はないんだが……お前、最近テンションやけに低くくないか?』
電話越しに心配する声が聞こえる。
「そんなことない……!」
多少の苛立ちを覚えたのか、語尾が強くなる。
『そうか……まあ、なんかあったらすぐに連絡してこいよ。それだけだ』
電話越しの声の主――伊達政宏はそう言い残して電話を切った。
しばしの間ディスプレイを見続け――スマホをしまいながら、頭を掻く。
「なんでもお見通しってか……やっぱり敵わねえな」
「和輝、大丈夫?」
様子を見に来たのか、部屋のドアから顔を出した琴実が様子を見て声をかける。
「ああ、問題ない」
「うん……それならいいけど、あんまり気にしない方がいいよ?」
大丈夫、といった具合に琴実の肩を叩いて教室に戻っていく。
その後ろ姿を見ると、どことなく元気がないように映る。
「やっぱり……気にしてるんだね」
琴実はその背中を心配そうに見つめたあと、康史たちのいる席へと戻った。
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