*第1章*君との距離

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中3の3学期、もう受験も間近に迫った1月のこと。 『天気、悪いわねぇ』 『うん……』 日曜日の朝。 私は当時高3だったお兄ちゃんと一緒に、お母さんの車で塾へと送ってもらっていた。 私が通う中学生用の塾の校舎と、高校生の校舎は隣にあったんだ。 『午後から雨も強くなるって。お兄ちゃんが終わる時間まで待ってられれば、お迎えに行けるんだけど……』 『俺、授業終わるの9時過ぎだけど?』 私に向けたお母さんの言葉に、お兄ちゃんが続けた。 お母さんはこれから、パートに向かう。 中3の私は授業が夕方5時までだけど、高校生は夜遅くまであるらしい。 『……大丈夫だよ、歩いて帰る!』 家までは歩いて20分。 普段なら平気な距離なんだけど……。 その日の天気予報は、曇りのち雨。 朝から空が普通の曇りの日以上に暗くて、不安が募ってた。 だって……私、雷が大の苦手なんだもん。 オバケよりも虫よりも、なにより雷が苦手なの……。 雨だけならいいんだけどなぁ……。
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