*第1章*君との距離

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『そういえば、山瀬さんちのゆうくん、沙菜と同じ高校受けるんですってね!』 お母さんが思い出したように言う。 『えっ、友貴が!? アイツ勉強苦手だったじゃん!』 お兄ちゃんが驚くのも無理はない。 ゆうくんは見るからに勉強が苦手なタイプだった。 中学でも、同じ男子バスケ部の不良っぽい人たちと一緒にいることが多くて、制服も着崩していた。 生活指導の先生には何度も注意されてるみたいだったし、テストで赤点を取って補習を受けてるのも見かけた。 だから……夏に同じ塾に入ってきたときは、私もびっくりしたんだ。 『でも、成績はぐんぐん伸びてるんでしょ?』 『そう……みたい。よく知らないけどっ』 私は素っ気なく答える。 スポーツや生徒会で活躍してる人たちとちがって、目立つ特技もない私は、勉強だけはそれなりにマジメにやってきた。 なんの取り柄もないなんて、イヤだしね。 だけど、塾に入ってからのゆうくんは、どんどん成績を伸ばしていて……。 塾のテストの上位表にも名前が出るほどになってた。 そして、志望校は私と同じ、この地区で2番目の進学校らしい。
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