*第1章*君との距離

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「待てよー、友貴(ゆうき)!」 「おっせーよっ」 あ、ゆうくん……。 廊下から聞こえた声に反応して、心の中でつぶやいた。 自然な黒髪に、きりっとした切れ長の目が特徴的な、整った顔立ち。 すらっとした体に……背があんなに高くなったのは、中学の頃だったかな。 そんな彼が、他の男子と一緒に駆けていくのを、私はボーッと眺めていた。 「あっ。隣のクラスの男子! 朝練帰りかなー?」 「いいよねー、かっこいい人多くて」 「ねーっ。中でも山瀬くんは別格だよね」 「うんうん、他の男子とちがって軽そうじゃないし! クールって感じ~」 近くにいた女の子ふたりの会話に、思わず耳がダンボ状態。 まだこの高校に入学して2週間しか経ってないのに、ゆうくんはそんな有名人なんだ。 すごいな……。 私なんかとは全然ちがう。 こうして、どんどん距離ができていく。 あの日のお礼も、言えないまま……。
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