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「待てよー、友貴(ゆうき)!」
「おっせーよっ」
あ、ゆうくん……。
廊下から聞こえた声に反応して、心の中でつぶやいた。
自然な黒髪に、きりっとした切れ長の目が特徴的な、整った顔立ち。
すらっとした体に……背があんなに高くなったのは、中学の頃だったかな。
そんな彼が、他の男子と一緒に駆けていくのを、私はボーッと眺めていた。
「あっ。隣のクラスの男子! 朝練帰りかなー?」
「いいよねー、かっこいい人多くて」
「ねーっ。中でも山瀬くんは別格だよね」
「うんうん、他の男子とちがって軽そうじゃないし! クールって感じ~」
近くにいた女の子ふたりの会話に、思わず耳がダンボ状態。
まだこの高校に入学して2週間しか経ってないのに、ゆうくんはそんな有名人なんだ。
すごいな……。
私なんかとは全然ちがう。
こうして、どんどん距離ができていく。
あの日のお礼も、言えないまま……。
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