2.短い猶予期間

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2.短い猶予期間

夏休み,勿論高校で友達の居ない私にはそんなこと関係なく,部屋で過ごしていた。 しかし部屋に居てても空虚なだけと思った私は自転車で10分程度のコンビニでバイトすることになった。 慣れない作業で怒られてばかりでいたが,それでも家にいるよりはかなり気が楽だった。 知り合いが来店することが多く,他人行儀に対応していたが千夏が現れたときは表情が強ばってしまった。千夏の家からはこのコンビニは近い為,来店することがあってもおかしくないわけで。 「あれ,栞じゃん」 気付かれてしまった。身体が動かない。心拍数が上がる,背筋が凍るような,なんとも表現しがたいけども,気がおかしくなりそうだった。 「い,いらっしゃいませ」 そう一言だけ言って作業に戻った。恐らく千夏は気付いていない。私が気付いてしまったということを。 「ねぇ栞-あんたさ,最近千夏の事避けてない?」 そう尋ねられてまた表情がこわばる。 「あんた顔に出すぎ。昔からそうだよね。なんで千夏の事避けんの。」 何故避けるのか,その質問に少し怒りを覚えた。自分が何したか全く理解していないのだ。もしくは理解した上で尋ねているのだろうか。千夏の思考回路を掴むのに頭が混乱する。何も言えない。黙ったまま。「栞ちゃ-ん,レジお願い。」 バイト先で知り合った先輩に呼ばれた。 「千夏,ごめん。仕事あるから。」 その場を抜け出すことが出来た。先輩には感謝しなければいけない。 「あ,あの...」 「栞ちゃん大丈夫?さっきの女の子凄い剣幕だったから心配で。」 「あ,有難う御座います...」 確かに凄い剣幕だった。凄い剣幕で怖くて一言も発することができなかった。 先輩はそれを見かねて私に声をかけてくれたらしい。千夏が店を出てからも震えが止まらなかった。店長が裏で休んでなさいと言ってくださったので私は従うことにした。また千夏が来店するのではないか。そう思うだけで気が狂いそうになった。
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