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あの男の子は、何だったのか…
それは、私と藤の初めての出会いであった。
あれから何日が経っただろう。
詩織のおかげで、傷は癒えた。
しかし、あの時縛って貰った布切れを見つめると、溜め息が漏れた。
何故か、あの少年の事が忘れられない。
頭にちらついて、離れないのだ。
「最近、我が殿は上の空な事が多いな」
「恋煩いではないか?」
等と、家臣達の噂話が聞こえる。
恋煩い…
そんな訳がない
きっと、あまりにボロボロな着物だったので
それが気になるのだ。
着物をあつらえてやろう
それで気がはれる。
そう思い、急ぎ子供用の着物を用意させた。
それを持って、出会った辺りに向かう。
口実は、猪狩りにした。
そして
「またアンタなのか…」
ハァと、溜め息を吐く少年が、覗き込んでくる。
私は、またもや穴に落ちてしまい
例の少年に助け出される嵌めに。
連れ来た家来も、また
はぐれてしまっていた。
「猪を捕まえたいのだが…
俺を飢え死にさせたいのか?」
仕掛けを直しつつ、ぼやく少年
流石に悪い気になる
「申し訳ない…」
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