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謝る事しか出来ない自分が悔やまれた。
「また迷子なのか?」
そう聞かれ
恥ずかしながらも、小さく頷く
「アンタの家来は、どうなってるんだ。全く」
彼は、悪態をついた。
「私はただ、この前のお礼にと…」
私は、おずおずと包みを差し出す。
「ん?…着物?」
少年は、それを受けとり中身を確かめ、呟く。
「ああ、ボロボロだったので
それに、私の為に引き裂かせてしまった…」
「気にしなくて良かったのだが…
それに、罠に引っ掛かれる方が迷惑だ」
「申し訳ない…」
辛辣に言う少年に、眉を寄せる。
私は、こんな所まで、何しに来たのだろうか…
彼を怒らせるだけ…
少年は、また家来を見付けて、近くまで連れて行ってくれた。
「本当に、申し訳なかった」
私は、何度目の謝罪を口にする。
嫌われてしまったに違いない
そう思うと、何故か胸が苦しくなった。
「もう良い、俺も言い過ぎた…
また猪狩りに来た時は『藤五郎』と呼んでくれ。直ぐに行くから」
藤五郎?
少年の台詞の意味が解らず、固まってしまう。
「藤五郎は俺の名前だ
来る度に、罠に掛かられても困るのでな」
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