出会い

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藤五郎は、補足の様に続ける。 「藤五郎… 私は、隆之助。また来ても良いのか?」 自分も名前を名乗り、藤五郎を見つめる。 嫌われてしまったと思ったのに… 「良いも悪いも、ここの猪は俺の物じゃないからな それに、殿様と言うのは色々と大変なのだろう? 息抜きは、大事だと思う」 そう言い、少し笑う藤五郎 その言葉が嬉しくて、私もつられて笑みを浮かべてしまった。 「有難う、藤五郎」 「礼を言われる事じゃないぞ 早く、戻れ 家来の声が渇れてしまうぞ」 思わず手を握りしめた私に、顔を反らして言う藤五郎 少し、可愛く思えた。 「また来る」 そう言い残して、家来の元に向かった。 藤五郎… 何故だろう 名前が解っただけで、胸が温かくなる気がした。 城や外でも自分は、殿様という事も有り 幼い頃からちやほやされて来た。 しかし、対等に向き合ってくれた者は居ない。 私は、寂しかったのだ。 しかし、藤五郎は私にへつらう事はしない 思った事を言ってくれるのが嬉し。 私は、きっと 初めての友達を見付けた気分なのだ。 だから、この様に胸が踊るのだろう。
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