出会い

7/14
前へ
/62ページ
次へ
何日か、忙しい日を過ごした後 再び猪狩りに出掛けた。 しかし季節は、既に秋の終わりへと差し掛かっていた。 猪狩りに出れるのは、今日が最後かも知れない。 着いて来た家来が、気づけば、また居なくなっており 好都合と、藤五郎を呼ぼうとした時だった。 「むぐっ…!」 突然、強い力で口を押さえつけられた。 横目で睨めば、屈強な男が目に入る。 「やっと、捕まえたいぜ 手こずらせやかって」 クックックと、笑う男 「噂通り綺麗な顔だなあ 殺す前に少し楽しませて貰おうか」 男は言うなり、私を木に押さえ、縛られる。 何が何だか解らず、混乱する私の口を、布で塞いだ。 声を出す事は、ままならない 下品に笑う男は、私の着物を脱がせた。 「綺麗な肌だな」 そう言って、私の肌を舐め回す。 気持ち悪い… そう思うのに、声は出せず 涙が零れた。 藤五郎… 何故か、目を瞑って藤五郎を思いだした。 暫く、あのおっちょこちょいな殿様が来ないお陰で、猪の罠は無事で助かる。 しかし、何処か寂しいと思うのは… 気のせいだろう。 今日も罠は、無事な様だ。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加