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「あ、ぐ、うぅ~ッ……!
もうっ、誕生日ケーキは用意できたわ!
さっさと料理も作っちゃいなさいよ、二人分だからね!!」
「あ、うん、分かった!」
熱くなった自分の顔を見せたくないらしく、恥ずかしさと相まって命令口調。
匠は素直に従って、すっかり忘れていた料理を再開した。
「えーと、えーと……」
エプロンを着けて手際よく準備していく彼を見て、少しずつ落ち着きを取り戻した少女は、ここで大事なことを思い出した。
「あ、そうだ匠。
考えておいてほしいことがあるんだけれど」
「ん、なにかな?」
包丁でリズム良く野菜が切っている匠。
彼は料理の腕もそこそこなので、話しかけられても集中力を切らすことなく作業を続けた。
「私、名前無いから。
光栄に思いなさい、私の名前はアンタに任せるわ」
「…………」
ザックリ。
「名前を?
僕が?」
「アンタ、血!!
玉ねぎと一緒に指まで切って血出てるけれど!?」
「僕ネーミングセンス無いけど、それでいいなら。
たはは」
「笑ってる場合!?
え、アンタ、もしかして傷をつけられて喜ぶ系の人なの!?」
「いやー、マイッタナ」
「参りそうなのはこっちよ!!」
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