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「ジャンジャッジャーーンッ!俺様が戻ってきてやったぜ。嬉しいだろお、遊馬ー?」
「…ああ、すごく嬉しいぜっ、ベクター」
「なっ…!」
「もう会えないかと思ったから、また会えて良かった」
「なんでだよっ、俺はお前達を傷付けたんだぞ!?」
「それでも、お前は俺の友達だから」
「……ちげぇよ。俺はてめぇの友達なんかじゃねぇっ。俺は真月じゃねぇからな!真月なんて所詮偽りだったんだよ!」
「確かに俺は真月だったお前と友達になった。けど、真月でもベクターでも関係無い。お前はお前だろ?」
「…………っ」
「俺の大切な友達だっ、」
あーあ…これだからこいつは嫌いだ。
お人好しで、突き放そうとしても付いてくる。
全てを捨てたとしても全部拾い集めて持ってくる。
ムカつく事ばかりをする野郎だぜ。
でも、だからこそ心のどこかで思ってしまう。
ーーああ、こいつの側に居たい。
「ったく、真月の姿でお前になんか会わなきゃ良かったぜ」
「え、なんでだよ、ベクター」
なんで、だ?
そんなもの決まってるだろ。
真月としてお前に会ってなきゃいれば、友情ごっこなんてしていなけりゃ、俺もお前も変な情なんて湧かなかっただろうよ。
仲間だと言ってくれた。
わざとした嫌がらせも笑って許してくれた。俺の為に何でもしてくれた。
いや、全ては真月の為なんだろうけど。
それでもうざくてムカついて仕方無いはずなのに、居心地良く感じていた。
それにこいつはあの時も…
『俺がお前を守ってやる…ッ!』
バカみてぇに必死に命懸けで俺の手を取ったんだ。
本当、真月として会ってなかったらどうなってたんだろうな。
今じゃ想像もつかねぇけど。
「ねぇ、遊馬くん」
「なんだよ、…って、え?」
「よかれと思って言います。あ、一度しか言わないので聞き逃さないでくださいねっ」
「ちょ、待て、ベクーーいや、真月っ」
「僕は君に出会えて良かった。さよなら、遊馬くん」
「真月…お前なんでっ…」
「なあ~んちゃって!その面なんだよ、笑えるなあ、ヒヒヒッ」
「えっ…お前今、真月…」
「ああ?真月ぅー?何言ってるんだよ、遊馬ぁ。夢でも見てたんじゃねぇの?俺は俺だ。お前がそう言ったんだ」
なんて皮肉にも言ってやれば、一瞬だけ少し寂しそうな顔をしてこいつはまた笑った。
「そうだなっ、ベクター!」
今度は俺の名を呼んでーー
***
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