傷を抱えて

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神々しい太陽の光が、瑠璃色の海に光輝く星砂を散りばめていく。 南国の楽園を連想させるその海には、余りにも不似合いな鋼鉄の要塞が隊列を組み波を掻き分けて進んでいた。それらは煙突から黒煙を立ち昇らせ、至るところに強力な装甲を意図も簡単に粉砕することが可能な艦載砲を携えている。 そこへ空から多数の影がプロペラ音を轟かせ、一直線に急降下、急接近してきた。 群がる鋼鉄の要塞からは、これ以上の接近は許すまいと弾幕が撃ち上げられる。 多数の影が何千発という弾幕の中へ飛び込み、身体を貫かれて爆散していく中、それを掻い潜った「一機」が黒い楕円形の球体を体から切り離し、急上昇した。 本体から切り離されたその球体は、黒煙を昇らせる鉄の要塞へ垂直に突き刺さり、表面を貫き自らの体から灼熱の炎と凶器と化した破片を四方へ突き刺していく。 それを発端に、一帯から次々に爆炎が舞い、水飛沫が飛び散り、耳を突き破られるかのような爆音が絶え間なく発生した。 穏やかな海域であったソロモン沖は今、艦隊同士が激突する戦場へと豹変したのだったーー 「重巡洋艦キャンベラが沈みました!」 「同じく重巡洋艦アストリア、大破!」 艦橋へ次々に味方の被害報告が届けられる。 「代将!このままでは!」 汗を滲ませ声を張り上げる水兵に代将と呼ばれた男は、眉を潜め唇を噛み締めた。 ……おのれ……日本軍め……!!
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