そしてその想いは……

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せっかくなので、比較的有名なエピソードをここに記載しておきたい。 この前代未聞の大災害に、世界各国が支援を申し出てくれた。そして実際に救援部隊が支援活動を行ってくれたのも事実だ。 しかし、各国の部隊は最初、被災地へ赴く際、非常に警戒していたという。 これは至極当たり前のことで、災害によってライフラインが断絶し、物資が不足し、更に治安が乱れている地では、地域によらず必ず物資を目的とした略奪、更には私利私欲に走った殺人や暴行が多発するからである。 その危険は、救援に駆けつけた部隊にも例外なく及ぶ。 アメリカ軍も過去に幾度もそのような場面に遭遇した。 物資を積んだ輸送ヘリが被災地に着陸すれば、そこへ銃を手にした集団が襲い掛かり、物資を強奪しようとしてくる。 治安維持組織である警察の機能が麻痺している被災地を歩けば、無人の商店から商品を盗んでいく人々や、複数の男性から暴行をうける女性の姿を目撃するのは当たり前の出来事だった。 そのため、各国の紛争地帯や被災地へ赴く救援部隊は、いらぬ被害を被らないために基本的には輸送機は被災地上空に到達しても着陸はせず、低空飛行で物資を空中投下するという輸送方式を取っていた。 故に今回も、駆け付けた各国の救援部隊は、定例通りそのようなことで被害を被らないように空中投下で物資を東北地方へ届ける予定を立てていた。
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