傷を抱えて

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太平洋戦争、又の名を大東亜戦争。 この中でも激戦と言われている、ソロモン沖での海戦は、日本軍、連合軍合わせて9万人以上もの人々が亡くなった悲惨な戦いとなった。 大日本帝国海軍連合艦隊司令長官を務めた山本五十六も、空路を移動中にソロモン諸島沖上空で米軍機に襲撃され戦死している。 その血みどろの戦いに、アーレイ・バークも従軍していた。 そこで目にした惨状ーー仲間の死。 昨日まで笑い合っていた上官、同僚、部下達が苦悶の表情を浮かべながら、或いはその暇も与えられぬまま、日本軍機の攻撃によって、母港であれだけ誇り高く浮かんでいた鉄鋼の要塞と共に燃え上がり、海の底へ散っていった。 その地獄の光景は今でもバークの脳裏に焼き付いて離れない。 そしてそこから沸き上がる感情ーー ーー憎悪。 自分の大切な仲間を容赦なく葬った日本人を、バークは許すことができなかった。 とにかく日本人を嫌い、侮蔑していた。 彼はホテルの従業員に話し掛けられても無視し続け、ただ部屋と入り口を行き来するだけ。 ホテル内ではそんな姿だけが、従業員達の目に映り続けた。
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