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2.確認
いつもながら、主の運のなさというか間の悪さに溜息が漏れる。
どうしてよりによってこの日に、足を捻挫したりするのだろうか。
ミラルダ夫人が主催する年に一度の舞踏会。
何ヶ月も前から社交界はその話題で持ちきりだった。
尤も主は全く与り知らぬところだとは思うが。
「骨が折れていなかったのが、不幸中の幸いですね」
「医者と同じこと言う」
失言だったと気がついたがもう遅い。
骨が折れようが折れまいが、痛みと共にベッドの中に押し込められている事実に変わりはない。
それでも幾分、顔色が戻ってきている。処方された鎮痛剤が聞いているのだろう。
「……今からでも、間に合うんじゃないか?」
申し訳なさそうに伏せられた瞳をこちらに向かせたくて、尖った声を出してみる。
「私をご婦人方の質問攻めに合わせようと言うのですか?」
「そ、そんなつもりじゃ……」
慌てて顔を上げた姿に満足し、ベッドに近寄る。
「だ、だって、あんなに楽しそうに準備していたのに。また来年まで一緒に待つ必要ないだろ」
思わず笑ってしまう。
楽しくないわけがない。
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