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でもそれは、いつも不安がるあたしが彼に癒されて、もとのあたしに戻るだけで。あたしはきっと、彼をうまく癒せてなかった。
ようするに、自分だけでいっぱいいっぱいだった。
「あ」
ふいに、星が流れたような・・気がした。
「みえた!」
樹が、勢いよく起き上がる。
「今のそうだよな?な!」
樹が、全身で喜びをあらわしながらキラキラしている。
最初は見間違いかと思ったけど、数秒おきに、細い線を描くようにいくつも星が流れた。
「すごい!連続でみれた!」
あたしも思わず、声をあげた。
星なんか普段見もしない、気にもしないあたしたちが。
こんなときだけ必死に、星を見つめる。星を見つけようと、する。
こんなときだけ必死に、星頼みをする。
お願い、星よ。
都合いいこと言ってるのは、わかってるけれど。
あたしの願いをかなえて。
樹の側に居たい、樹のそばにいたい、イツキノソバニイタイ
あたしは心の中で三回、乙女ちっくな願いを唱えた。
星が消える前に三回言うのって、難しい。てか、たぶん言えてない。
できるだけ短くしたつもりが、最後は変な呪文みたいになってしまった。
「・・・みかげ、何願ったの?すげえ必死に祈ってた」
あたしは、小さく笑いながら樹を振り返った。
「言わないほうが、叶う気がする」
「何それ」
少し気持ちが軽くなったような、気がした。
その後も、星はいくつもいくつも流れた。 ー完ー
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