3人が本棚に入れています
本棚に追加
人の結婚式に出席するのは、恐ろしく寂しさが全身を包む。
結婚式の招待状。
郵送で届いたら、きっと私はなにかしら理由をつけて行かなかった。
ただ、今回ばかりは2人でマンションに現れ、手渡しで招待状を受け取った。
「まゆには、必ずきて欲しくて。ごめんね2人で押しかけちゃって」
まゆ。
そう、私がまゆです。
両親が交通事故で亡くなり、遺産で買った高層マンション。
でも高所恐怖症で、限界ギリギリだったのがこの10階。
まわりには、事故の保険がたっぷり入ったのに10階って‥‥。
なんて皮肉たっぷりに言われたこともあったが、それ以上の階では生活できないんだから仕方ない。
言わせたい奴には言わせておけばいい。
ちょっと脱線したので、戻りましょう。
ともちゃんが来たのは、4月に入ってすぐの日曜日。
数日前に電話で、だいたいの概要は聞いていたが、まさか2人でくるとは思わなかった。
去年、誰かの結婚式の引き出物にあったティーセットを急いで準備した。
オープンキッチンのカウンター越しに2人を見ながら、買い置きしてあるアールグレイの茶葉が開くのをぼんやり待つ。
うちに来て、2人の世界にいる。
カウンターを背に、換気扇をつけてタバコに火をつける。
メンソールは、すっと体にはいって思考回路をつなげる。
タバコを作った人は、素晴らしい。
最初のコメントを投稿しよう!