妄想は世界を救う

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換気扇に吸い込まれていく煙を見つめる。 それまでゆっくりと上がった煙が、換気扇のそばまで届くと急に速度をあげて一気に吸い込まれていく。 頭の中にイメージがわいてきた。 蟹の足身を吸う感じに似ている。 タラバガニじゃなくてあの赤い小さいほうの蟹。 細い足の身を吸うと、ズズッと口に入る。 その吸引力を思い出す。 その蟹の名前が出てこない。 そして、一人ほくそ笑んでしまう。 最近、者の名前や人の名前がスラッと出てこなくなったな。 呟いて、タバコを消す。 口角をあげて、眼を大きく開く。 眼を閉じて、小さく頷いて。 そして、振り返る時の笑顔を作る。 紅茶とクッキーをのせたトレイを持ってリビングに戻る。 「私も早く招待状を出すほうになりたいわ」 笑いながら2人の前にカップを並べる。 よし、完璧。 と思った途端、砂糖とミルクを忘れたことに気がついて右のこめかみがヒクヒクする。
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