妄想は世界を救う

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誰もいなくなったリビング。 見渡して、ふとため息。 そして、バルコニーにでた。 このマンションを選んだ理由がこのバルコニー。 約4畳分あるという広々したバルコニーがなにより落ち着いた。 ロッキングチェアと小さなテーブルを置いてある。 小さく揺れながら、タバコに火をつけた。 眼を閉じて、たった今の出来事を思い返す。 (結婚したくなっちゃって…) (特定の人がいるんじゃないかな…) ともちゃん と けんちゃん の笑顔が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。 モヤモヤした頭の中、タバコの煙でモヤモヤした視界。 乱暴にタバコを消してバルコニーから戻り、リビングの隣りの部屋へ小走りで入る。 パソコンの電源をつけ、マウスを握る。 デスクトップの無題フォルダをクリック。   カチカチっと音をならして画面いっぱいに大きな文字が浮かび上がる。 《妄想日記》 書きためた文章が、生き返る。 そして、そこにまたあらたな日記がたった今追記されようとしている。 キーボードに手を置いたが、スクロールする前に、とある名前を見つけて手をとめた。 ともちゃん。 その日付は、199X年5月2日。 思わず、読み返してみることにした。
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