『雨の降る街』

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どこかで聞いたピアノの音、懐かしい、痛い、やさしい、苦しい。 光の指す水面がどんどんと遠くなっていく。 私は必死でもがいて、けれど力なく沈んでいく。 深く、深く沈んでいく。暗く、歪んで、黒く、黒くなっていく……。 はっと目を覚ます。気が付くと、左手に暖かい感触があった。 少女が冷えた私の手を、ぎゅっと、やさしく包んでくれていた。
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