3人が本棚に入れています
本棚に追加
砂漠、見渡す限りの砂漠。
砂塵が吹き荒れて、前も見えない。
手元の懐中時計を見る。動いていない。
どうやら、吹き荒れる砂塵が入り込んで壊れてしまった様だ。
ぎゅっと懐中時計を握り締めて肩掛け鞄にしまう。
吹き荒れる風の音、薄暗い空、途方もない砂漠。
僕は膝をついて、力なく倒れた。
世界はある日突然に終焉した。
そして僕たちは死なない存在となった。
俗物、肉体的な束縛から解放され、永遠を生きる。
薄れいく意識の中で、いつからだろう、と思った。こんなにも、生きるということが辛いと感じる様に
なったのは。
子供の頃、あんなにも無邪気に楽しめた世界は、
いつの頃からか真っ黒に染まって、束縛するだけの
世界になった。
僕にとって、永遠を生きる、なんてことは、
開放どころか、かえって束縛としかならないのでは
ないか。
時間だけが与えられて、だからこそ、僕は希望を
求めた。けれど、もういい。僕はここで…。
最初のコメントを投稿しよう!