『夢見る光』

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世界は10日前に終わった。 人間は俗物、肉体的な束縛から解放され、永遠を生きる こととなった。 ここは他者に干渉することのできない、終わった世界。 これまであった日常風景も消えて、すべてがノスタルジックに、 おぼろげに、儚い世界へと変化を遂げた。 もう、世界が終わる前の記憶も、感覚もない、 僕はけれど、あるものを求めて旅をしていた。 列車の線路と、ぽつぽつと弱弱しく光る電灯を頼りに、 歩き続けた。 たどり着いた最初の街には、人間はいなかった。 けれど、たどたどしく数名の人間が、とある建物の 地下へと歩いていくのを見かけた。 僕は不思議に思って、その後を追いかけた。 他者に干渉できない世界で、同じ方向を目指すなんて 珍しい。 薄暗い階段を下ると、そこには多くの人間が集まっていた。 ざわ、ざわ、とやけに騒がしい。 みんながそれぞれ手を挙げて、我先にとなにかを求めている。 そんな人間たちの中に、平然と端の壁で腕を組んでいる老人が いた。
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