『雨の降る街』

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少女はくすくすと笑ってこちらを見て、私もなんだか 面白くなって笑ってしまった。 世界が終わる時、私は何をしていただろうか? おぼろげな、まるで儚い夢のような生きていた頃の記憶。 しとしと、と雨が降るその静寂の中で、思い出しては消え、 思い出しては消え、そう、なんだか恐ろしくもあって、 思い出してはいけないことがあるような気がして。 雨がたまっていく、私の身体ごと埋め尽くす様に、 苦しい、息ができない。目を見開いて、その水の中で 高い水面を見上げた。
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