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さらりと帯がほどけて落ちて、脱ぎ捨てられる赤の浴衣。現れたのは、森にも戦場にも似つかわしくない黒のビキニ。
引き締まった肢体を惜しげもなく晒し、シエナは強くその名を叫ぶ。
「焼き尽くすわよ! 『赤の貴婦人(カーディナル・レッド)』!!」
噴き上がる炎。影の軍勢や黒竜すらも怯ませる紅蓮がシエナの体を包んで隠し、真紅の生地へと姿を変える。
焼け付くような真紅のドレス。蠢く軍勢の最中にあってなおその姿は華やかだ。
大きく開いた背中から再度溢れる紅蓮の炎。シエナの魔力そのものである炎は小さな羽根を生み出し重ね、大きな翼を紡ぎだす。
「赤の書、4章、4節」
はらりはらりと羽根が舞い落ち、巨大な陣を地面に描く。
黒の巨体が、影の軍勢が、紡ぐ言葉を縫い止めようと押し寄せる。けど、遅い。
円が生まれ、文字が刻まれ、魔法陣が完成する。圧縮された魔力は流れを作り、紡ぐ言葉が解き放つ。
「【真炎の爆発(カーディナル・エクスプロージョン)】!!」
轟音。広がる火炎と吹き抜ける熱波。鮮烈な赤の暴力は敵だけでなく取り囲む木々もあぶって燃やし、後ろにいたオレたちまでも炎にまかれ──ない。
挙動は小さく結果は絶大。撫でるように手をふるう。それだけで炎は森への進行を止め、翻って影を討つ。
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