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再生が間に合わない。それは影だけでなく黒竜もだ。鱗は剥がれ、爪は燃え落ち、ゾンビもかくやといった様相を晒す。
圧倒的な戦力差。けど、それは心器狩りも理解してたらしい。
「チョクセツはまだムリか」
言った背後の景色が裂ける。黒々とした空間の裂け目。その先に覗くのはここと同じ森の風景。ただこちらと比べると幾分空気が柔らかい。
元の世界、逃げる気か!
「逃がさないわよ! 【九頭龍炎(カーディナル・バイス)】!!」
シエナの足元から炎の龍が起き上がる。九本の頭は疾く応え、影を撃ち抜き牙をむく。
ギリギリ。けど、これならなんとか間に合う。裂け目をくぐられるより早く、炎の牙が敵を捉える。直前だった。
炎を裂いて影が立つ。
黒竜。鱗を焼かれ、爪を燃やされ、それでも翼を広げて炎龍を遮る。大きく開いた翼には焼けた痕は見られない。
空白獣の再生能力。その全てを翼に回してるんだろう。
一発、二発、三発目で穴が空くも、即座に塞がり次を受け止める。
ほんの一呼吸ほどの攻防。押し勝ったのは炎龍だった。けれど、強固な翼を穿った先に討つべき敵はいなかった。
逃げられた、だけじゃない。
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