【色無き器を満たすモノ】

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「王様、包丁のお姉ちゃん、銃のお姉ちゃん。お茶ですよー」  いやあ、食後のお茶まで悪いねえ。  肉屋の店先、その端っこまでニノがお茶を持ってきてくれる。ゆっくりと、慎重に。お盆をひっくり返さないよう小さな手でしっかり握って。  三者三様に礼を言いつつ口を付け、油の余韻を流し込んだ後、再び会話の口火を切ったのはシエナだった。 「あれだけ食べておいてから言うことじゃないかもしれないけど、あんたサイフの中身ホントに大丈夫なの?」  あー、払うときに財布の中身を見られたか。  確かに入学準備の出費もあったばかりだし、懐の中身は心もとない。けど、 「お礼なんだから、そんな細かいこと気にしなくていいっての」 「うーん。そう言われても、やっぱりそのお礼ってのが引っかかるのよね」 「いや、三日でここまで治ったのもシエナのおかげだし、ちゃんと礼はしとかないとな」  やはりと言うか当然と言うか、心器の使い過ぎでオレの手足がズタボロだったのが三日前。  そのケガがもう完治してるのは、シエナの回復魔法があったからだ。しかも直接流し込んだ方が効果を高めれるからって、三日間も隣で手を握っててくれたんだし。
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