【色無き器を満たすモノ】

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「それでお二人共そんなに疲れているわけですかぁ」 「そう、です。予想以上に、道も、混んで、ましたし」 「休日の、ギルド周りは、人が、多いのよ」  な、なんとか約束の時間までには間に合ったか。  危なかった。遅刻すると目の前のメイドさんが怖い。 「シロウさん、もう大丈夫ですから降ろしてください」  おお、そうか。呼吸を整えるのに夢中で忘れてた。  トンと軽やかな音と共に、背中にあった柔らかな感触が消え失せる。  そのまま前へ。回り込んで来たノエルは礼儀正しく頭を下げた。 「わたしの体力がないばかりにすいません。背負ってくれてありがとうございました」 「ああ、いいっていいって」  そっちの方が速いからって、ノエルを背負ったのはオレだし。  病み上がりとはいえ、ケガはシエナのおかげで治ってる。身体強化と反動がでないくらいの微弱な筋力強化。それくらいなら問題ないし、それだけあれば一人背負って走るくらいには十分だ。 「時間は余裕をみてありましたのでぇ、少し休んで呼吸を整えてから本日の予定を話し合うとしましょうかぁ」  メイド姿をしたギルドの看板受付嬢、アリシアさんは間延びした声でそう言った。
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