【色無き器を満たすモノ】

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 では案内も終わったし、帰るとするか。そう言ってきびすを返した学園長だったけど、ふと何かを思い出したように振り返る。 「そうそう。ひとつだけ助言をやろうとして忘れておった。ワシが教えてやった修行は順調に進んでおるようじゃの」 「えっと、あれからまだそんなに日が経ってないんですから、そんなに進んでませんよ。しかも大半は寝ながらシエナに回復魔法をかけてもらってたばかりですし」 「今のお前には、それが一番効率の良い修行じゃよ」  ツイと指先が宙を撫でる。何の変化も起こらない。目に見える範囲では。  肌で感じて理解する。指に指揮され魔力が踊り、小さな文字を描きだす。  読めるじゃろ。  そう書かれた文は内容通り読める。けど、だから何? 「意味は自分で考えろ」  そのアドバイスが最後だった。言いたいことだ言い切ると、チビ学園長はポンと目の前から消え去ったのだった。 「ホントに道案内だけだったな」 「まあ学園長は忙しい人だからね」  これくらいなら、クリスたちだけに任せても良かったんじゃないですかね。
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