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耳に届くのは老若男女入り混じった話し声。休日ということもあってか、太陽が頂点に達するにはまだまだ時間があるってのに、すでに人が溢れかえってやがる。
それぞれが思い思いに飲んで騒いでケンカしてを繰り広げてるようで、オレたちが入って来たことにも気づかず騒ぎは続く。
ただ皆が皆その輪に加わってるわけじゃなかったらしい。
「色無し野郎がウチになんの用だ」
鋭い目つきと尖った髪型。赤髪ヤンキーが立ちはだかっていやがった。
「ここはテメェ程度が入ってきていい場所じゃねえぞ」
「オレは呼び出しくらってるんだっての」
「はぁ? んなわけあるか!」
ヤンキーの上げた声に集まる視線。喧騒が止み、ひそめられた言葉が舞う。
「あいつらは?」
「おい、あいつたしかA組の色無しだろ」
「ああ、あいつが噂になってる魔女の腰巾着か」
鋭さを増す視線の群れ。どうにもいらない敵を増やす事が多い気がするのは、できれば気のせいであってほしい。
視線と言葉。鋭くなるのがそれだけなら良かったんだけど、ヤンキーの声に反応して立ち上がる連中も出てくる。
取り囲むように近づいてくるそいつらに、双真とカインが警戒をみせた。
これだけ非歓迎ムードなら、全部無視して帰ってもいいんじゃないですかね。
そんな内心とは関係なく高まってく一触即発の緊張感。
それを切り裂いたのは、上から降ってきた声だった。
「お待ちなさい、その人たちは客人ですよ」
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