【色無き器を満たすモノ】

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 凛とした声。降ってきたのはそれだけじゃなかった。  たなびく裾となびく袖。ぶつかる視線を遮って、ヤンキーとオレたちの間に赤い影が降り立った。 「マ、マスター!?」  長い、床に届くくらい長い赤髪の女性だ。その身を包む深紅の着物は、シエナの着てる軽い浴衣とは物が違う。  生地も帯も、素人目にも明らかな高級品。  それを優雅に着こなして、おっとりと微笑む姿はとても戦う人間のモノには見えない。  けど、分かる。纏う魔力の尋常じゃない量と密度が。佇む姿勢の隙のなさが。そして逆らい難い威圧感が。  ヤンキーは驚い声をあげた後一言も発することはできず、周りにいた男たちも身じろぎひとつできてない。  そして、それはこちらも同じだ。オレもクリスも、双真もカインも、何も言えずにただただ視線を奪われる。  存在する。それだけでこの場を支配する絶対的な君臨者。  これが『不死鳥の翼』のギルドマスター。血の気が多いギルドを束ねるトップか。
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