3510人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと、たしかにそうですけど」
「私も銀嶺館で暮らしていたのよ。とは言っても学生時代の話だから、もう20年くらい前になるのかしら」
懐かしさにふけるようにオレたち二人を眺めながら、レイラさんはポツリポツリと言葉をこぽす
「懐かしいわねえ。あの建物は元々ボロボロでね、それを私の友達が買い取ってアパートにしたの」
「友達って、学生が買い取ったんですか!?」
「そうよ。普段から思い付きで色々しでかす娘だったのだけど、ボロアパートでの共同生活がしてみたいなんて突然言い出してね。私を含めて何人か引っ張っていかれたのよ」
楽しそうに、愛おしそうに。大事な宝物を自慢するように、レイラさんは銀嶺館での思い出を語ってくれた。
闇鍋をしてみんなでのたうち回ったり、炎の魔法で焼き肉をして危うく火事になりかけたり。
古いアパートなんだから昔の住人がいるのは当たり前だ。
けど、オレにとってノエルやシエナ、イロさんと騒がしく暮らす家である銀嶺館で、他の人たちが同じ様に楽しく生活してた話を聞くのは、ちょっと不思議な感じがする。
最初のコメントを投稿しよう!