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「こんなところで何をしてるんですの?」
倒れるシエナ。押し倒すような格好のオレ。
まだだ。まだツーアウト。冷静に対処すれば切り抜けられるはず。
「待て、落ち着け、リゼ。ちゃんと説明するから。これはお前が思ってるような状況じゃないんだ。ほら、シエナからも何とか言ってやって──」
援護を求めて視線を送り、固まる。
頬を染め、両手で必死に色々隠そうとするシエナの姿。思わず生唾を飲んだオレの反応は、男として当然だったと思う。
ただ、完全にスリーアウトだよね、これ。
「変態成敗ですわ!!」
「いや、ちょ、待って! 不可抗力! 今のは不可抗力だから!」
「問答無用! 白の書3章──って! あなた、そのケガ大丈夫なんですの!?」
右手に集まった魔力が雷光へと姿を変える直前。
貫かれた胸に気づいたらしい。詠唱が中断され、白の魔法は不発に終わる。
ふう、助かった。
駆け寄ってくるリゼ。立ち上がってシエナを視界に入れないように気をつけながら、事の顛末を粗方説明する。
「そういうことでしたの」
「そういうことなんだ。でさ、なんか着るものない?」
「それならこれを着ておくといい」
返事は別の方角からだった。
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