【緑の旅路・色無き目覚め】

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 考えるヒマはなかった。  駆け出す。反射的に一歩を踏み出し、瓦礫の山を踏み越える。  併走するのは白い影。白衣を纏ったシエナだ。 「シロウ!」 「こっちだ!」  一分が、一秒が、おしい。残り少ない魔力がもどかしい。  扉の残骸を蹴り開けて、暗い廊下に飛び出した。  一直線。距離もそうない。  強化された脚力で、階段前までたどり着く。  道を塞いでいたはずの氷の壁はなくなっている。  緑のクモもどこにもいない。  それだけじゃない。  動く気配が何もないどころか、戦った跡すら一つもなかった。 「……ノエル?」  それがどちらの口から漏れたのかすら分からない。  ただ、それに対する返答はいつまで待ってもありはしなかった。
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