【エピローグ代わりのプロローグ】

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「……魔法は世界に付け足されたルール。温度が下がれば水が凍るのと同じ。条件さえ整えば、意思なんて関係なく発生してしまう現象。だからこそ魔法には【バレット】みたいな詠唱名と、【魔弾】みたいな魔法名に分かれてる。そうしないと会話の中で名前を言っただけで発動する危険性がある」 「やめて……」 「……発動に必要なのは詠唱と魔法陣と魔力。わたしたちに足りないのは、どれ?」 「やめてください!!」  頭のどこかが警鐘を鳴らす。これ以上聞いてはいけない。聞いてしまえば、もう戻れない。  悲鳴のような拒絶の声。それが響いた瞬間だった。  ノエルの視線の先。ウルスの背後に影が落ちてくる。  紅く輝く無数の眼。大きく広がる八本の足。  クモの空白獣。ウルスが蹴散らした相手と姿は同じ。  けれど、サイズはケタが違った。  頭だけでもノエルやウルスより大きく、足一本をとっても丸太のようだ。  幅が広めに作られた階段ですら埋め尽くすほどの巨大が音もなく着地する。  親玉、奥の手。なんにせよ、この階段を守る要だろう。今までの有象無象とは別格だ。  だというのにウルスは動じない。チラリと一瞥くれただけで、すぐに視線をノエルに戻す。
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