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突如現れた破壊跡。そこを中心に階段は崩壊を始め、ポッカリと空いた穴はウルスさえ飲み込もうと足元まで迫った。
けれど──
「……やりすぎた。《白の理(リ・コントラクト)》」
再び零れた白い囁き。
穴がなくなる。破壊跡なんて初めからなかったように、薄暗い階段の風景が戻ってくる。
だけではなかった。
「な、何がどうなってるんですか!?」
青い双眸が見上げるその先。消滅したはずの空白獣が、長い足を振り上げる。
しかし、それが振り下ろされることはなかった。
感情の読めない瞳でクモを見上げるウルスが三度囁く。
今度はクモだけが消え去った。
残ったのは、またも焼け焦げたような臭いと、漂う魔力の残滓だけ。
何が起こったか分からない。どうやったのか理解できない。
そんな状況を作り出したウルスは、色の読めない瞳をノエルに向ける。
思わず、一歩後ろへ下がっていた。
「……あなたには、わたしと来てもらう」
「そ、そんなこと──」
「……抵抗は無意味。それは今ので分かってもらえたはず」
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