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反論できない。未知の攻撃に、防御も回避も一切の対処が思いつかない。
それでも、
「青の偽典真章1節! 【九蛇の氷劇(ナインス・クリティカル)】!!」
折れない。逃げない。諦めはしな──
「……言ったはず。抵抗に意味はない」
白の声が一言囁く。
「《白の理(リ・コントラクト)》」
それだけだった。それだけで、すべてが終わる。
氷の蛇は打ち砕かれ、激しい痛みが腕を襲う。
「ぐぅッ!?」
膝が落ちる。浮かぶ涙で視界が霞む。
「……諦めるべき。あなたじゃわたしにかなわない。大人しくしていれば痛い思いをしなくて済む」
「──ッ!! まだです!! 青の偽典真章1節!」
それでも下は向かない。佇むウルスを睨みつけ、再び魔力を練り上げる。
腕の痛みだけじゃない。姉に半分を預けても、なお多過ぎる魔力が、上級クラス魔法の連発に暴れまわって体を蝕む。
口の端から血が流れ、練った魔力の一部が漏れ出す。
青く輝く魔力の欠片。ノエルの制御を離れても青の光を失わない魔力を見つめ、ウルスの表情がわずかに変わる。
それは寂しげな笑みだった。
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