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「……似てると思わない?」
言葉が零れる。指が指し示す。
ウルスの示したその先は、緑の残滓。
空白獣が残した魔力の欠片。
「……始まりから終わりまで、ひとつの色しか持てない魔力。何ものに変わる可能性も持ってない色」
「な、何が言いたいんですか!?」
思わず詠唱を止め、悲鳴のように問い返したノエル。
その隙をウルスは見逃さない。
雷光、接近。
ノエルの目の前に現れて、小さな拳を叩き込む。
「あ──」
速度も威力も最低限に加減された拳は、必要以上の苦痛は与えず、ノエルの意識を闇にいざなう。
遠ざかる世界の中でノエルが聞いた最後の言葉。
それはどこか泣きそうな声だった。
「……わたしもあなたも“同類(バケモノ)”だ」
色無き王と赤の魔女Ⅲへ続く
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