第二章

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ヤクザに追われ、 住む場所も失くし途方に暮れ。 ただあてもなく。 人として最低限の暮らしをしていた。 空を見上げれば、 薄暗くはらはらと白い粉雪が降っていた。 ただ着の身着のまま身を隠すように辿りついたのは、名古屋市内にある美術館。 ここは、 いわゆるホームレスのコロニーとなっており所狭しとブルーシートの軒が連なっていた。 白い吐息を悴んだ掌にあてながら、美術館の建物周辺を闇雲に歩いていた。 おおよそ、 無意識にブルーシートを避けていたんだと思う。 自分はホームレスじゃない。 自分はまだ落ちぶれていない。 そう言い聞かせているのかもしれない。
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