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「く、われ!
離さんかい!!ゴラァ!」
逆腕固めの態勢のまま、
男は尚も黒田の腕を締め上げる。
「ガッ…っつぅ」
まだちょっとは、
スジさえ通せりゃまだ救いもあったかもしれねー。
それに同じ結果にはならなかっただろうさ。体格、腕力だけがケンカの強さじゃねーんだよ。
男としての器が何よりも強ぇ!!
それが分からないうちは、
何度やっても敵わねぇんだ。
分かるか、オッさん!
「あ!ガッ…」
尚も力を込めると、
黒田の表情がみるみると苦痛の表情へと変わっていく。
今日はもういいだろ?
オッさんがナメてかかったクソガキ相手にこの様だ。
周りにはさぞ威厳もクソもねーだろうよ。もし気が治まらないようならもう一度出直してこいや!
俺はもう…
逃げも隠れもしねーよ。
もう二度とな。
そのまま男は、
黒田の腕を離し距離をおく。
黒田は腕を抱えながら、
その場にうずくまった。
「てめぇ…知ったような口を聞きやがって」
いいから行け!
「くっ…覚えてろ」
黒田はそれだけ吐き捨てると、
静かに立ち上がり店を後にする。
「く、黒田さん…」
かなは、
その背中を一瞬追おうとするが、
その場で男の方を振り向いた。
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