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私は実家に帰ると、アルバイトを始めた。
誰でもできる仕事だけれど、もともと記憶力がいいことと、時間にうるさいことが幸いして、重宝されることもしばしばだった。
けれど、だれもがほめるこの記憶力が、私は恨めしかった。
ふとした瞬間。
鏡の自分と目があった瞬間。
時計の針が刻む、一分一秒に。
私は彼のことを想わずにはいられない。
そして、私のことを映していないあの透き通った茶色い瞳を思い出して胸が苦しくなるのだ。
もう、こんな思いしたくないと思う。
何度も。何度も。
だから、私は彼のことを嫌いになった。
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