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和子はその前にすわって、美咲を呼びました。
けれど、美咲は誰かと話をしています。
別のクラスの彩花でした。イジメられっ子というウワサのある、目つきがきつくて、暗い表情をする子です。
そんな彩花と美咲が知り合いだなんて、とても意外でした。
そして、その子を連れて来たので、もっとおどろきました。
「友達なの?」
「近所に住んでるの」
「へぇ―っ」
和子がわざわざ「ここ空いてるよ」と、いってあげても、彩花はお礼もいわずに暗い顔のままです。
彩花の第一印象は『なまいき』と悪いイメージでした。
「そのくらいで、きらいになっちゃったの?」
抱きしめていた小人の人形がいいました。
「それだけじゃないもん」
和子は人形をひざに置くと、クラブの2回目を思い出していました。
前半の手芸クラブは、人形やぬいぐるみ作りだと、先生から説明されました。
夏休み前に作り上げて展示するのを目標に、まずは自分の好きなものを選んでいいというので、和子はお気に入りの本を家から持ってきて、みんなに見せました。
和子としては、『みんな』というのは、美咲と恵美とナオの三人のことです。けれど、いつのまにか彩花がグループの中に入っていました。
美咲が話しかけるので、彩花もそのつもりになっているようです。
「どれもかわいいね」
「うん。これ作りたぁい」
和子の本なのに、美咲は自分にではなくて、彩花に話かけていました。
それも、気に入りません。
「わたしね、みんなでこの小人を作りたいって思ったの。本の写真みたいにバスケットの中につめこんで展示するの。かわいいでしょう? タイトルは『なかよしバスケット』なんて、どう?」
この時の『みんな』も、和子の頭では彩花はふくまれていませんでした。
けれど、
「写真は三つだけど、五つの小人の方がにぎやかでいいわね」
と、恵美。
「ほんと、別のクラスだけど、同じクラブになったんだから、五人がなかよく出来るように、そのタイトルもステキね」
と、ナオまで。
ほめられているのに、なぜかおもしろくないと、和子は思いました。
「それだけで、いじわるしようと考えたの?」
ひざの上の小人がすまして、先生みたいに聞きました。
「そんなこと考えてなかったのよ。いつのまにかそうなっちゃったの」
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