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「みんなで彩花をムシしようっていってたでしょ? そんなに彩花がきらい?」
「わかんない、わかんない」
首を振る和子の頭の中で、手芸店にいった日のことがよぎりました。
いままでいつも一緒にいた美咲が、気がつくと彩花のとなりにいて、おしゃべりしているのです。
あのおとなしくて、返事の声さえ小さくて、いつも和子のいうことにただうなずくだけの美咲が、彩花だと楽しそうに話しかけているのです。
そんな様子をみていたら、どんどんイライラしてきました。
どうしてそんなことをいいだしたのか、和子にもわかりません。
ただ、美咲と彩花が店の奥で楽しそうにしているのをみているうちに、そばにいた恵美とナオにこう聞いていました。
「彩花のことどう思う?」
二人は、和子のないしょ話のようないい方に同じく声のトーンを落として
「どう思う?って」
いいにくそうに返事を返してきました。
「わたし彩花と同じクラスになったことがないから、どんな子かなぁーって。イジメられっ子ってウワサ聞いてるし……」
「確かにイジメは受けてるみたいね。あの目つき恐いから」
と、ナオがソッといいました。
「たしかに暗そうだしね」
と、恵美もうなずきます。
「そうよね、イジメを受けそうな子よね。わたしあの子を見てるとイライラするの。ねぇ、グループからはずしたい。自分から離れるように協力してくれない?」
「協力って、何するの?」
「あの子と話をしないで。いい? 話してるとこみたらゆるさないから」
二人が顔をみあわせているのを、和子は承知の意味にとりました。
現にその後、恵美もナオも、彩花に話かけることがなかったのです。
「でも、違ったのよね」
赤い三角帽子をかたむけて、小人が見上げました。
「話をしなかったのは、和子の前だけ。つまり、あなたが仲間外れにされていたのを自分で気がつかなかったのよね」
和子の目に、また涙がたまりました。
「なんか変だとは、思ったことがあるの。四人の後から教室に入ったとき、みんながわたしを見る感じとか。あわてて話を止めたみたいだったし」
「そうね。それに恵美とナオが話かけないようにしてから、美咲と彩花がますますなかよくなっちゃったしね。意味のないことたのんじゃったね」
和子の目から、ポロンと涙が落ちました。
「どうしたら良かったの? どうして、こうなっちゃったの?」
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