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そんなことしたでしょう?」
「たしかにしたけど、そんなたいしたことじゃないでしょ」
「ううん。あれが、彩花が感じていた悲しみなの。みんなの結論は……」
「わかったわよ!」
和子は小人が落ちるのもかまわず、立ち上がりました。
「つまりわたしが全部悪いって事でしょう?
みんなにあやまれって事でしょう?
もう、聞くのいやよ!
もう、クラブにも出ないし、みんなとももう会わない!!
美咲とも友達やめるわ」
階段をかけ上がると、そこに彩花が立っていました。
自分で作ったピンクの小人をかかえて、いつものように、目つきの悪い視線で、じっと見ていました。
「何よ、文句があるなら、はっきりいいなさいよ!」
「和子ちゃんって、せっかちね。
美咲ちゃんのいう通り。先へ先へと一人で行っちゃう」
和子の作った赤い小人が追いかけてきて、頭の上に浮かびました。
「本当にその通りよ。
わたしたちの出した結論を早合点してる」
赤い帽子を手で押さえつつ、小人は和子の前にやってきました。
「結論はね、わたしたちみたいに『話し合うこと』だったの。
自分で悪いと思ったことはね、ちゃんと相手にあやまらなきゃ。
そして、なにもかも一人で決めないで、少しは相手にまかせなさい」
力がぬけたように、ストンと落ちてきた人形を和子は両手でつかまえました。
「ふしぎよね……人形が飛ぶなんて」
でも、彩花は首をかしげただけでした。
「なんの事? でも、わたし目が悪くて、よく見えないの。だから、目つきがよくないって、いわれるんだけど、メガネをかけるほどじゃないし……」
「見えなかったの? じゃ、人形の声は?」
「声? 人形の? 和子ちゃんっていがいと夢みたいなこと好きなのね」
「それじゃ、その持ってる人形はどこにあったの」
「これ? 誰かが机に置いたの。
他のみんなのところにもあったみたい。今、もどしに来たのよ。
そしたら、和子ちゃんの姿が見えたから。
気になって……さがしちゃった」
腕の中の小人は、つついてもただの人形でした。
耳にあてても、何も話してはくれません。
ただ、最後の結論は耳の中にはっきり残っていました。
「話し合うこと」「あやまること」「相手にまかせること」
「ごめんなさい。彩花のことよく知らないのに、いじわるしちゃって」
彩花のそばに行くと、和子は素直にあやまることが出来ました。
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