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「わかりました。鬼退治へ行って参ります」
優君が決意したように、力を込めて言った瞬間、お爺さんとお婆さんの顔は輝きに包まれた。
「そうじゃ!桃太郎。何かあった時のために、きびだんごを持っていきなさい」
お婆さんは立ち上がり、どこからか取ってきた灰色の布で包んである何かを渡す。
きびだんごだろうな。
優君はお婆さんに優しく微笑み、きびだんごを受け取った。
「お前は良い子だね~」
さっきまでとは、別人のようにお婆さんの顔は優しくなる。
「このきびだんごは、途中でお腹が空いたら食べるんだよ。そこにいる、動物達にもやりなさい」
お婆さんが視線をチラッと俺の方に向け、言い放った。
動物……?まさか!
俺は慌てて、自分の体を見た。
大丈夫だ。体は人間だ。もしかしたら、猿に変わっているんじゃないかという一抹の不安は、杞憂に終わった。
横に並ぶ仁と美沙も変わりはない。
言葉だけのようだな。
「さあ、準備が出来たら、出発しなさい!」
お爺さんの声と共に、正座していた俺達は腰を上げ、立ち上がった。
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