鬼退治

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小屋から出ると、視界は雲一つない青い空と、広大な畑と、遠くに映る山で覆い尽くされる。 これがゲームの世界? さっきまで居た、空気が悪い夜の都会が嘘のようだ。 眩しく照らす太陽は、額に汗を滲ませ、息を吸うと体に侵入してくる空気は明らかに新鮮で、紛れもなく本物である。 優君を先頭に、僅かな雑草が生えた土の道を歩んでいく。 後ろを振り返ると、お爺さんとお婆さんが、何かを期待したように笑顔を浮かべ、二人で手を振り、俺達を見送っていた。 「あのお爺さんとお婆さんは、コンピューターキャラクターなんだ」 優君は歩きながら、空に向かって話す。 「鬼退治を断っていたら、どうなってたんですか?」 仁が優君の横に並び、疑問をぶつけた。 それは俺も気になっていた。極端な事を言えば、逃げ出したり、絶対に小屋から動かない事だって出来るはず……。 その場合はどうなるんだ? 「簡単だよ。少しでも間違えばゲームオーバー」 「え?それってもしかして、死ぬって事?」 意外な答えに、思わず俺は声を出した。 「ううん。クエストは自分が死なない限り、現実の世界で死ぬ事はない。あの場合、鬼退治を断れば、ゲームオーバーになって、始まる時に名前を入力した あの暗い部屋の機械の前に戻されるだけだよ。最もそのクエストは24時間出来なくなるけどね。他にもクエストによっては通常のクリア方法とは違う裏面が存在したりもするんだ」 なんだか……奥が深すぎるな。 仁を見ると、表情から察するに自分が聞いた事以外は知ってたようだ。
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