鬼退治

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指差した方角を見ると、波で打ち上げられたように、脆そうなイカダが置かれていた。 海の目の前まで来ると、規則的に打ち寄せる波の音が、より強くなる。 見るからに、骨組みが悪そうな丸太と擦り切れたボロボロのマスト。そのそばには、長いオールが一本。 大きさは、四人が胡座をかいて座れそうなくらいはあるが……。 なんか行く先々で不安が襲いかかってくるな。 優君は手際よく、波のタイミングに合わせ、イカダを砂浜から海の上に浮かべた。 ジェットコースターに乗る時の感覚と似ている。 スリルを味合うのを、胸を高鳴らせ並んで待っているような。 ただ決定的に違うのは、胸を高鳴らせているのは楽しみとかそういう感情じゃなくて、恐怖による嫌な思いだけだ。 一体、鬼はどんな奴なんだ? イメージでは、肌は血のように赤く、2mを越す巨大な身長で見るからに強靭な鋼の肉体。手には殴られれば即死しそうな大きなトゲがいくつもついた金棒。 そんなの、本当に戦えるのだろうか? 四人でイカダに乗り込み、オールは仁が持ち、島に向かって漕ぎ出す。 俺の心臓は、さらに高鳴った。 無意識に刀の柄を握り締める。
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