鬼退治

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波に揺られるイカダの上は、まるで死に招かれているようで、非常に心地悪い。 普段は船酔いなんてしないのに、腹から何かが込み上げてきて一気に気持ち悪くなった。 小さく見えていた島が、近づけば近づく程、大きくなってくる。 端から見れば、木一本すら生えない巨大な一つの山がそびえる島。山以外、何も見当たらない。 薄気味悪いオーラを、島全体が放っている。 あそこに鬼がいる。 「和也。少し疲れた。交代してくれ」 まさに仁がそう言って、俺がオールを受け取った、その時だった。 「キャッ!」 美沙が、息を詰まらせるような小さな悲鳴を上げる。 視線を移すと……。 海は真っ赤に染まっていた。 途端に体中に走る鳥肌。凍りついたように、体が固まる。 ――何……これ? 「伏せて!」 突然、優君が怒鳴り声を上げた!
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