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耳栓でもあれば、少しはこのバカデカい声がマシになるのか……。
後ろを振り向くと、雑魚一号は盾を離し、両手で耳を塞いでいた。
音は防げないのか……。
気が付けば、鬼は金棒を振り上げている。
「……」
ブラックアウトの意味か。
面白いな。
ここで死ぬ……?
俺がこのクエストを選んだのには理由がある。
推奨LEVEL80以上。
普通に考えれば、初めから挑むようなクエストではない。ましてや、いきなり裏へ挑戦するなんて、無謀すぎる。
「はあ……」
途中、自分の中でさすがに迷いはあった。
「理論なんてない。勘かな……」
ずっと自分の居場所を探していた。
自分の有り余る才能を発揮する場所。
自分が満足できるスリルと興奮。
『なあ?非日常的な出来事ってあると思う?』
『ん~非日常的か。きっといつか見つかるような気がするけどね。あんたなら』
カップを両手で持ち、コーヒーを飲んで、笑う君の笑顔。
『笑えるような事があればいいのにね』
笑ってたよ。
でもあの事件があった日から、俺は心の底から笑った事がないかもしれない。
心の中で人の名前を呼んだ事がないかもしれない。もしかして、死に場所を探していたのか?
きっと違う……。
蘇る記憶。君の体温と温もりと声と言葉。
叫び狂う村人達。
「三人とも伏せろ」
確信していた。
ここは俺の居場所だ。
俺は神刀を引き抜いた。
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