新撰組屯所

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お金を貸した新撰組の羽織を着た男。 よくよく冷静になって考えてみれば、おかしな話だ。 10万円を貸した後は、すぐにトンズラ。どう考えても、初めから逃げようと思ってたに違いない。 俺は騙されたって事かな。 本当に騙したのなら、大したものだ。トレードマークの新撰組の羽織を着て、人を騙すなんて。 お金を借りた瞬間に消えるなんて、新手の詐欺だ。サヨナラ詐欺とでも名前をつけておこうか。 だけど、やっぱりこの話は優君に言いづらいな。お金が絡んでる事もあって、なんか申し訳ない。 「ん?」 「何だあれ!?」 「すごーい!」 後部座席から、異様にテンションが高い仁と美沙の声が聞こえてくる。 チラッと後ろを見ると、二人は窓に向かって何かを見ながら騒いでいた。 何があるんだろう……。俺は自分から見て、左の窓に視線を移した。
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